本作は最終的に3部作となった「ダークナイト・トリロジー」の記念すべき第1作目であり、バットマンの誕生エピソードが丁寧に語られています。バットマンのモチーフがコウモリである理由が分かったり、ブルースがバットマンとして成長していく過程が見られたりと、ファンにとっても、非常に貴重な作品でしょう。バットマンの武器やアイテムが徐々に作られていく様子に、興奮が高まっていきます。
本作には日本人俳優の渡辺謙さんが「影の軍団」のリーダーであるラーズ・アル・グールとして(後に影武者だったことが判明しますが)出演しています。そり上げた頭と白いひげが、いかにも怪しい集団のリーダーといった様子でハマり役です。あまり前面に出なかったうえに途中で死亡するため長い出演時間ではないのですが、ダークナイト・トリロジーに日本人が出演した事実は、非常に誇らしいことだと言えるでしょう。
本作ではバットマン映画に初登場となるスケアクロウが、ラーズ・アル・グール以上と言っても良い活躍をしています。スケアクロウのビジュアルはホラー映画の登場人物のようで、とても恐ろしく、退廃的なゴッサムの様子を象徴する悪党の一人です。特にスケアクロウが使用する幻覚剤によって人々が異常なまでの恐怖を感じてしまうシーンはとても迫力があり、本作に不思議な魅力を加えています。
本作のラストにおいて、今後ジョーカーの登場を予感させる小道具として「ジョーカーの絵柄のカード」が出てきたことは有名です。しかし、実はジョーカー登場を暗示させた演出は、それだけではありません。ジョーカーのカードを回収した警官の名札をよく見ると、「J. Kerr」と書かれているのです。J. Kerr(Joe Kerr)とはジョーカーが使う別名であり、筆記体で分かりにくいのですがしっかりと書かれています。
ブルース・ウェインは誰もがうらやむ大富豪であり、本作でもホテルに高級車のランボルギーニで乗り付けています。ただしこのランボルギーニは、ブルースが大金持ちであることを示しているだけではありません。この車の正式な車名は「ランボルギーニ・ムルシエラゴ」であり、ムルシエラゴはスペイン語で「コウモリ」を意味するのです。本作は全体的に重々しい雰囲気ですが、そんな中にもこのような制作陣の遊び心が隠されています。
ヒマラヤの山奥にて、氷の上でブルースとラーズ・アル・グールが訓練をするシーンは、本作における注目シーンの1つです。非現実的な鍛錬にも見えるこのシーンですが、実は本当にアイスランドにある薄い氷の上でクリスチャン・ベールとリーアム・ニーソンが演技をしています。とても迫力のあるアクションシーンを演じた俳優たちの耳には、薄い氷が溶けてミシミシと割れていく音が聞こえていたそうです。
※本ページの情報は2023年12月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
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DIGLE MOVIE編集部
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DIGLE MOVIE編集部ディレクター。音楽、アニメ、漫画、映画、ファッションなど、全てのアートカルチャーをこよなく愛しています。 某音大卒、アメリカ留学後に大手音楽レーベルにてアーティストの新人発掘、マネジメントに携わり、現在はアーティスト兼ディレクター兼アートコンサルタントとして様々な素晴らしいモノ、コトを提供中。 アートを新たな価値として提供する事にも日々模索中でMUSIC HACK DAY Tokyo 2018にも出場し、Sigfox賞を受賞。
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