本作の注目ポイントとしてまず挙げたいのが、単なるアクション映画を超越した、複雑で完成度の高いストーリー展開です。本作ではバットマンとジョーカー、善と悪の二項対立を軸に、登場人物それぞれのドラマが非常に詳細かつ繊細に描かれています。そのため本作は一般的なアメコミ映画らしい単純な勧善懲悪ストーリーとは一線を画しており、アクション映画ファン以外の層も見事に取り込んだ大作となっているのです。
本作を語るうえでは、ジョーカー役ヒース・レジャーの映画史に残る怪演を避けることはできません。ヒースはジョーカーの狂気や残虐性、ズルさを見事に表現しきり、彼が本作を映画史に残る名作にしたといっても過言ではないでしょう。残念ながらヒースは本作が公開された年に亡くなられていますが、歴代の名優達が演じてきたどのジョーカーにも負けない「ヒース版ジョーカー」を私たちに残してくれました。
本作にはいたるところに大迫力のアクションシーンが盛り込まれており、そのどれもが注目に値するのですが、中でも特に見逃せないのがジョーカーの尋問シーンです。ジョーカーを捕らえたゴードンはハービーの居場所を聞いてもはぐらかす彼に業を煮やし、バットマンに取り調べを任せます。そこでの2人のやりとりは非常に見ごたえがあり、バットマンの形相はとても恐ろしいのに、どうしても目が離せなくなるのです。
本作における影の主役といっても良い活躍を見せたジョーカーには、実は元になったキャラクターがいると言われています。それは、スタンリー・キューブリック監督の作品『時計じかけのオレンジ』の主人公アレックスです。クリストファー・ノーラン監督がヒースとジョーカーについて話し合った際に、アレックスが例に出たと言われています。ヒース版ジョーカーの、何をするか分からない危うさは、確かに『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスのイメージと重なると言えるでしょう。
本作の印象的なシーンの1つにハービーが入院していた病院をジョーカーが爆破するシーンがあります。実はここでジョーカーを演じたヒースがアドリブ演技をしていました。ジョーカーが病院内を爆破しながら歩き、外に出たところで大きな爆発が起きるはずが、なかなか爆発が起きません。本当はトラブルによって爆発が遅れていたのですが、演技があまりにジョーカーらしく自然だったため、見ている人の多くはアドリブだと気付かなかったのではないでしょうか。
本作は長編劇映画としては史上初のIMAXカメラで撮影された作品です。IMAXカメラは非常に高い解像度の映像を撮影できるのですが、カメラ自体が大きくなりすぎてしまうために映画撮影にはあまり適さないと言われていました。しかしノーラン監督は本作の随所にIMAXカメラを使用し、迫力とリアリティを共存させた映像の撮影を成功させたのです。例えばオープニングの銀行強盗シーンはIMAXカメラが活用されており、非常に壮大なシーンに仕上がっています。
※本ページの情報は2023年12月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
WRITER
DIGLE MOVIE編集部
国内外の“今”の音楽、映画情報が知れるメディア「DIGLE MAGAZINE」。邦画、洋画、アニメなどの幅広い映画ジャンルに精通するメンバーが集まった新進気鋭のメディア編集部が日々気になった情報を発信します。
EDITOR
Asahi
DIGLE MOVIE編集部ディレクター。音楽、アニメ、漫画、映画、ファッションなど、全てのアートカルチャーをこよなく愛しています。 某音大卒、アメリカ留学後に大手音楽レーベルにてアーティストの新人発掘、マネジメントに携わり、現在はアーティスト兼ディレクター兼アートコンサルタントとして様々な素晴らしいモノ、コトを提供中。 アートを新たな価値として提供する事にも日々模索中でMUSIC HACK DAY Tokyo 2018にも出場し、Sigfox賞を受賞。
POPULAR
人気記事